top of page
bg5.jpg

コラム詳細

Column details

ico00.png

2026年9月8日

新任施設長シリーズ⑤|人が育たない組織は、崩れていく ― 施設長の人材育成 ―

施設長になると、職員について考える時間が一気に増えます。

「なかなか育たない」「同じことを何度言っても変わらない」「主任に任せたいのに、結局自分がやることになる」「若い職員がすぐ辞めてしまう」

こうした悩みは、どの施設にもあります。

しかし、人材育成を

「本人のやる気の問題」

だけで考えてしまうと、組織はなかなか変わりません。

施設長が考えるべきなのは、

「この組織は、人が育つ仕組みになっているだろうか」

ということです。

「教えた」と「育った」は違う

研修をした。

マニュアルを渡した。

注意した。

説明した。

それでも職員の行動が変わらないことがあります。

そのとき、

「何度言えば分かるのだろう」

と思いたくなります。

しかし、知識を伝えることと、行動が変わることは同じではありません。

知ったことを、

実際の場面でやってみる。振り返る。助言を受ける。もう一度やってみる。

この繰り返しがあって、少しずつ力になります。

人材育成とは、情報を渡すことではありません。

経験を、学びに変えることです。

「任せる」と「放置する」は違う

人を育てるためには、仕事を任せることが必要です。

しかし、

「任せたのだから、自分でやって」

では育ちません。

逆に、

「失敗したら困るから」

と施設長が全部やってしまっても育ちません。

大切なのは、

任せる範囲を決めること。

何を本人に考えてもらうのか。どこまで自分で判断してよいのか。困ったときは誰に相談するのか。いつ振り返るのか。

ここまで含めて「任せる」です。

任せるとは、手を離すことではありません。

少し離れたところから支えることです。

失敗させない組織では、人は育たない

新しい仕事を任せれば、うまくいかないこともあります。

会議の進行がぎこちない。報告書の整理が十分ではない。職員への伝え方を間違える。

施設長がそれを見ると、

「自分でやった方が早い」

と思います。

実際、その方が早いことも多いでしょう。

しかし、それを繰り返すと、

施設長だけが上手になり、周囲は育ちません。

もちろん、利用者の安全や権利に関わる重大な失敗を経験させればよいわけではありません。

しかし、組織が吸収できる範囲の失敗まで奪ってしまうと、学ぶ機会も奪ってしまいます。

人を育てるには、

「安全に失敗できる範囲」をつくること

も必要です。

主任を「伝言係」にしない

施設長一人で、すべての職員を直接育成することはできません。

そこで重要になるのが、主任やリーダーなどの中間層です。

ところが、主任が、

「施設長がこう言っていました」

と伝えるだけになっている組織があります。

これでは主任は育ちません。

主任には、

状況を整理する。自分なりの判断をする。職員に伝える。結果を振り返る。

という経験が必要です。

施設長が主任に問いかけるなら、

「あなたはどう考える?」

が重要です。

すぐに答えを教えるのではなく、

考える役割を渡す。

これが中間層育成の第一歩です。

「できない理由」ではなく「次にどうするか」を考える

職員との面談や会議では、

「忙しかったからできませんでした」

「人が足りませんでした」

「本人が嫌がりました」

といった説明が出ることがあります。

理由を確認することは必要です。

しかし、そこで終われば改善にはつながりません。

施設長が次に聞きたいのは、

「では、次はどうしますか?」

です。

できなかったことを責めるのではなく、

何を変えるか。誰に相談するか。いつ試すか。

まで考える。

これを繰り返すと、職員は少しずつ、

「説明する人」から「考えて動く人」

へ変わっていきます。

人材育成は「評価すること」ではない

人材育成というと、

「できている/できていない」

を評価することに偏りがちです。

しかし、育成で大切なのは、

「次に何ができるようになればよいか」

を一緒に明確にすることです。

例えば、

「リーダーとして弱い」

では、何を直せばよいのか分かりません。

それよりも、

「会議で職員の意見を整理して、最後に決定事項を確認できるようになる」

とすれば、具体的になります。

育成には、抽象的な人格評価ではなく、

行動として確認できる目標

が必要です。

職員を見るとき、強みも見る

問題のある職員ほど、欠点ばかりが目につきます。

しかし、その人にも、

利用者との関係づくりが上手い。記録が丁寧。場を明るくする。細かな変化に気づく。

といった力があるかもしれません。

弱点だけを修正し続ける育成は、本人も育成者も疲れます。

施設長は、

「この人の強みを、どこで生かせるだろう」

という視点も持っておきたいものです。

人材育成とは、欠点をなくすことだけではありません。

その人の力が、組織の力になる場所をつくることでもあります。

人が育たないと、施設長がすべてを抱える

主任が育たない。

職員が自分で考えない。

何でも施設長に聞きに来る。

すると施設長は忙しくなります。

忙しいから、人材育成に時間を使えない。

人材育成をしないから、さらに施設長に仕事が集まる。

こうして悪循環が始まります。

反対に、

職員が考える。主任が判断する。必要なところだけ施設長に相談する。

という状態になれば、施設長は本来の仕事に時間を使えるようになります。

つまり、人材育成は、

職員のためだけに行うものではありません。

施設長自身が、施設長の仕事をするためにも必要なのです。

人が育つ組織をつくる

研修を増やすだけでは、人は育ちません。

経験させる。

任せる。

問いかける。

振り返る。

強みを生かす。

そして、もう一度挑戦してもらう。

こうした日常の積み重ねが、人を育てます。

施設長自身が何でもできる組織ではなく、

施設長がいなくても、それぞれの職員が考え、判断し、支え合える組織へ。

人材育成は、そのための仕事です。

人を育てることは、未来の施設をつくること。

施設長の重要な仕事の一つです。

次回

新任施設長シリーズ⑥|優しいだけでは、施設は守れない ― 労務と組織統治 ―

次回は、職員を大切にすることと、必要な指導やルールを曖昧にしないことをどう両立するか。施設長としての労務管理と組織統治を考えます。

bg06.jpg
bottom of page